こんにちは!
図書館学習サポーター・自然研D2のT.Sと申します。
今回は少し難しい話をお届けしようと思います。論文の書き方についてです。
基本的に自分が出した研究成果を発表する方法は数々あります。
国内学会発表、国際会議での発表、特許出願、論文出版など。
特に重要なのは論文を出版することではないでしょうか。新潟大学の博士後期課程では博士号取得要件に査読付き論文があることを求められます。研究費の獲得にも必要ですし、奨学金免除にも大きく寄与してきます。
しかし、論文を書くことはとても難しいです。
僕自身も一番最初の論文を執筆した時には難しすぎて博士後期課程への進学を断念しようと考えてしまったほどでした(現在は共著論文も含めて5報国際誌に出版されています)。
なので、自分自身結構苦しんだ経験から、論文を書くのに苦しんでいる人たちに紹介した書籍や、それに基づくアドバイスをこのブログでまとめようと思います。僕自身現在は論文を書くことが割と楽しかったりもします。
それでは論文の書き方についてです。
論文は基本的に、
①Title(タイトル)
②Abstract(要約)
③Introduction(序論)
④Methods(方法)
⑤Results(結果)
⑥Discussion(考察)
⑦General Discussion(総合考察)
の7つに分けることができます。論文を書く際には、この7つそれぞれについてしっかり考えなければいけません。この要素の多さも論文を書くことの難しさを際立たせていると思います。このブログでは一つの指針を示すので是非参考にしてみてください。
では、一つ一つ見ていこうと思います。
①Title(タイトル)
読者は大体タイトルと②のAbstractに注目して論文を探します。なので、そのことを念頭に置いて①、②について考える必要があります。
特にタイトルは長さについてよく考える必要があります。短すぎて何について書かれた論文かわからなければ、なかなか内容を見ようとは思ってもらえず、細かく長すぎると高度すぎる内容だと身構えられてこれもまた読もうと思ってもらえません。
タイトルについては長さについてよく考えてみましょう。
また、笑いを誘うようなタイトルや流行や時事関連のタイトルを付けたくなった場合は10年くらい先の未来の研究者がそのタイトルの意図を理解してくれるかを考えるべきですね。
②Abstract(要約)
Abstractには論文検索によく使われているキーワードを入れておくことが大事です。主にタイトルとAbstractの内容を読者は最初に読むので、まず見つけてもらうために気を配ることが大事です。
③Introduction(序論)
論文を書く上でIntroductionについては1番苦戦するのではないでしょうか。特に論文を初めて書くときにはほとんど指導教員や共同研究者に書いてもらう形になると思います。なので、僕が参考にしている(というか、いつも使っている)雛型を紹介したいと思います。
Introductionは、
1.論文全体の概観
2.研究のきっかけとなった疑問
3.本研究について
の3部構成で書いていきます。それぞれについて詳しく見ていきます。
1.論文全体の概観
研究のきっかけとなった一般的な問題、疑問、理論について書きます。
研究を行うことの正当性を示して読者の興味を喚起し、論文の枠組みを提示することで論文を読み進めやすいようにする役割の箇所です。
2.研究のきっかけとなった疑問
関連した研究について説明し、過去の研究のレビューを行い、研究のきっかけとなった疑問を詳細に論じます。
Introductionの本体に当たります。
3.本研究について
2.まででこの論文で論ずる疑問の文脈や重要性を読者は理解しているはずなので、解決法の詳細を記載します。読者にその解決法がこうした疑問にどう答えてくれるかについて説明します。
以上から
1.で論文で扱う問題に読者をいざない、
2.でこの問題に関しての研究のレビューを行い、
3.で当該研究がいかにしてその問題を解決するかを明瞭に述べる
という流れを作ります。
注意点としてはIntroductionは研究を紹介する場所であり、色々な人がこれまで言及してきた全てを網羅的にレビューするところではないということです。(僕も延々とレビューをして大幅に修正を受けることはままあります。)
④Methods(方法)
このセクションにも僕が参考にしている雛形があり、
- 研究計画
- 装置やソフトウェア、測定方法
- 研究の手続き(Procedure)
の3つに分けていきます。ここでも1つ1つ見て行きましょう。
1.研究計画
サンプルのサイズや特性について説明し、実験計画を説明します。
2. 装置やソフトウェア、測定方法
装置やソフトウェアを使った場合にはそれについて明記し、尺度、検査、評価ツールの組み合わせに関しても明記します。
3. 研究の手続き(Procedure)
方法セクションの中心。自分が何をし、何を行ったかについて書きます。独立変数と従属変数に関しては詳細に書きます。
この部分の目標は自分が用いた手順と先行研究で使用されている手順との関係を明らかにすることです。これによって研究で使用した方法の妥当性についての懸念を緩和することができます。
⑤Results(結果)
このセクションには分析内容を書きます。
ただ、何点か注意が必要で、
・学位論文の審査ではデータの分析内容をありったけ書くことが求められる"場合も"あります
・しかし、投稿論文では論文で扱った問題に関する結果のみ報告し、流れの明確さを重視する必要があります
また、数値や統計学的検定が並んでいるだけの結果のセクションは好ましいとは言えず、明確なストーリーのある文章を書く必要があります。
以上の点に気をつけるのが良い結果のセクションを書くのに必要です。
また、結果のセクションは
- 読者に仮説を提示
- データを提示
- それぞれのデータの持つ意味を説明
という流れで骨組みを組みます。
データの羅列をするべきセクションと誤解されがちですが、このように組むことが本当は求められます。
また、データは文章中にちりばめるのではなく表や図にすることがかなり重要です。論文の査読で指摘されることが多いそうです。
ここまで、Results(結果)までの書き方を説明しました。
後編では2つの"考察"について書いていきます。
参考文献
ポール・J・シルヴィア. できる研究者の論文生産術: どうすれば「たくさん」書けるのか. 高橋さきの訳. 講談社, 2015.