フィールドワークのススメ(事前準備編その1)

こんにちは、現社研D2のY.Kです。

皆さんはレポート、論文、あるいは授業案のテーマを考えるとき、

何から手掛かりを得ているでしょうか。

文献から?ネットから?

ここでは、実際のフィールド(現地・現場)の出来事や場所から

テーマを考え、情報を集めるフィールドワークについて解説していきます。

特に今回は、フィールドワークを行うにあたって、どのような関心から調査を行っていくかを解説します。

※筆者は人文地理学出身です。内容が人文社会系に偏るとは思いますがご了承ください。

 

フィールドワークって何?

フィールドワークとは、研究者自身が調査の対象の現場・現地(フィールド)に入り、インタビュー資料収集を行い調査することです(谷 2010)。

 

人文学系では地理学文化人類学民俗学
自然学系では地質学生物学
の研究で行われます。

フィールドワークを行うことで、

自分の関心や問題意識をより実際の出来事から考えることができることはもちろん、

物事を考える上でのヒントを予想外の角度から得られることがあります。

こういった調査に基づいた研究を実証研究といいます。

また、ここで紹介していくフィールドワークの手順は主に、既に調査するフィールドが決まっている場合について紹介していきます。

 

問いを立てる

フィールドには、問題意識を抱くことができる出来事が数多くあるでしょう。

しかし、その全てを調べ、理解することは困難です。

そのため、実際にフィールドに入る前に、どのような課題に取り組むか(解決していくか)を明らかにすることが必要です。

このことを、問いを立てるといいます。

 

1. 自らの関心から考える

皆さんはどのような関心から調査を始めるでしょうか。

何かを調査し、考察する上では、自分が興味関心を持ち続けて取り組めるテーマを選択することをオススメします。

ここで「講義の先生にウケそう」などの考えからテーマを決めると、調査のモチベーションが湧かず、最悪の場合、調査に協力してくれる人たちに失礼な対応をしてしまうかもしれません。

私は伝統文化などに興味があったので、学部生の時は芸能食文化といったものから、現地で興味を持てそうなものを探しました。

 

2. フィールドへの関心を考える

はじめから関心のあるテーマがあるかというと、その限りではないと思います。

もし調査対象地が決まっているのであれば、インターネットで自治体等のHPを確認するのもよいでしょう。

 

私は学部生の時に山梨県で調査実習をすると決まった際、単純にGoogleで「山梨県」と調べました。

そこから、山梨県民の海産物の消費が多いこと、海産物を使った名物が多くあることを個人のブログから知り、海産物を使った料理について調べようと考えました。

山梨県甲府市の郷土料理 あわびの煮貝(「日本の食生活全集 山梨」編集委員会 (1990)より引用)

関心を持てそうなものを探すことも、フィールドワークの醍醐味でしょう。

 

また、検索サイト(GoogleやMicrosoft Bing、Yahoo)だけでなく、図書館などで新聞記事を調べることもオススメします。

特に学生の皆さんは自分の所属する大学の図書館のサービスを調べてみてください。全国紙や地方紙の記事検索サービスが学内限定で提供されている場合があります。

 

たとえば新潟大学附属図書館では

(全国紙)

朝日新聞「朝日新聞 クロスサーチ」

毎日新聞「毎索」

(地方紙)

新潟日報「新潟日報記事検索データベース」

が提供されています。

学内限定、同時アクセス数1名限定などの制約はありますが、キーワードや掲載日を指定して、過去の新聞記事を簡単に検索できるのでオススメです。

(新潟大学の学生の皆さんは、以下のリンクから探してアクセスしてみてください。)

www.lib.niigata-u.ac.jp

 

3. 先行研究から考える

皆さん自身の問題意識や、フィールドへの関心について、どんな研究が行われているかを調べることは非常に重要です。

何を、どのように調べるべきかを理解するヒントになります。

例えば先ほど例に挙げた山梨県の海産物の料理なら

・料理の歴史、山梨県の食文化との関係

 →食文化史,地理

・製造する会社での料理の生産過程

 →経済、産業、水産業

・郷土料理やB級グルメの販売促進

 →観光、マーケティング

などの関心が挙げられるでしょう。その関心について研究が蓄積されている学問分野を探し、どのような調査、研究が行われているかを調べてみましょう。

こうした研究の蓄積を調べる手段としては、インターネットで検索するのも良いですが、図書館で各学問の入門書(「~学入門」、「~学への招待」など)から調べることをオススメします。

特に社会科学系の研究は、「やわらかアカデミズム・「わかる」シリーズ」がオススメです。

ci.nii.ac.jp

 

ここまで、フィールドワークを行う上での問いの立て方を紹介しました。

次回は立てた問いをもとに、調査方法の選び方など、実際に調査を行う前の準備について紹介していきます。

 

>>事前準備編その2(作成中)に続く

 

 

【参考文献】

谷 富夫・山本 努 編著 2010. 『やわらかアカデミズム・<わかる>シリーズ よくわかる質的社会調査ープロセス編』 ミネルヴァ書房.

opac.lib.niigata-u.ac.jp

 

「日本の食生活全集 山梨」編集委員会 1990. 『日本の食生活全集 19 聞き書 山梨の食事』 農山漁村文化協会.

opac.lib.niigata-u.ac.jp

 

 

 

 

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