天の川って何?銀河って何?どうやってできた?

こんにちは。自然研のR.I.です。

夏と言ったら天の川。

街灯などの人工光が少ない場所へ行くと、夜空にはきれいな星の帯が横たわっているのが見えます。

そう、みなさんおなじみの天の川です。

みなさんはこの天の川の正体をご存じでしょうか?
また天の川を外側から見たとき、どのような形をしているかわかりますか?

今回はそんな天の川と、銀河についておもしろーいお話をします。

天の川の全貌

地球

credit:NASA



私たちの住む地球を外側から見るとどうなっているか想像できますか?

地球儀や衛星写真を見たことのある方ならわかることと思います。

上の画像のように青々としたきれいな球形をしています。もちろん青いのは海で、白いのは雲や南極大陸、緑や薄茶色は陸地です。

普段建物に囲まれて過ごしている私たちですが、地球の全貌を見るとそのほとんどが大自然であることが実感できますね。

太陽

credit:NASA
極紫外線で撮影

credit:NAOJ
地上から見た太陽

そんな地球を始終煌々と照らしてくれるのは太陽です。

太陽は自ら光り輝く「恒星」と呼ばれる天体です。

この太陽のおかげで私たちは生命活動を営むことが出来ていると言っても過言ではないでしょう。

 

 

太陽系

太陽系のイメージ

地球は太陽の周りを公転、つまり太陽の周りを回っています。

地球と太陽の関係を俯瞰してみると、上の画像のようになっていると考えられます*1

これを見るとわかるように、実は地球以外にも太陽の周りを公転している天体が複数存在しているのです。これらはまとめて「惑星」と呼ばれています*2

太陽を中心としたこの組織は「太陽系」と呼ばれます。

恒星

credit:NAOJ
地上から見た夜の星々。左下から右上に伸びる一帯が天の川

いったん舞台を地球上に戻しましょう。

晴れた夜空を見上げると星々が瞬いています。

この星々の正体は一体何なのでしょう。

勘の良い方はもうお気づきでしょう。そう、きらきらと輝くあの星々は太陽と同じ恒星なのです。

夜の空を埋め尽くしている、私たちが肉眼で見ている星のほとんどは恒星です

身近に太陽という特別な星がいたわけですが、実はその仲間はたくさん存在していたということになりますね。

天の川銀河(銀河系)

credit:NASA/STScl
銀河系(天の川銀河)のイメージ
同心円の中心に太陽系が位置する

では舞台を宇宙に戻してさらに俯瞰して様子を見てみましょう。

さっきよりももっともっと遠くから引いた目で地球を見てみるとします

すると上のような様子になっていると考えられています*3

白いつぶつぶがたくさんあるのがわかると思います。

なんとこのつぶつぶの1つ1つが恒星なのです!

その数ざっと数千億個とも言われています。

 

この組織は一般的に「銀河系」「天の川銀河」と呼ばれています。

そしてこの集まりこそが天の川の正体だったのです。

銀河とは

credit:AFP/NASA/ESA
ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影された銀河団「SDSS J1038+4849」の画像
1つ1つが銀河

私たちの住む地球は、太陽系の1要素であることがわかり、さらにその太陽系も銀河系(天の川銀河)の1要素であることがわかりました。

 

ではさらに上の階層というのはあるのでしょうか?

銀河系のような天体はほかにもあるのでしょうか?

 

結論:どちらも存在します。

 

銀河系のような天体は一般的に「銀河」と呼ばれ、ほかにも数多く存在しています

この銀河が群がることで「銀河群」が形成され、さらに集まると「銀河団」という集団が形成されます。上の画像は銀河団の画像です。

何で出来ている?

NGC2525
credit : ESA/Hubble & NASA, A. Riess and the SH0ES tea

ではこの銀河とは何から出来ている天体なのか、説明しましょう。

銀河は主に恒星やガス(気体物質)、ダスト(固体微粒子)、ダークマター(まだ検出されていない未知の物質)*4から構成される天体です。

私たちが望遠鏡越しに銀河を見ると、もしくは銀河の天体写真を見たときに、銀河が輝いて見えるのは恒星のおかげです。

見かけ上は恒星で埋め尽くされているように感じるのですが、実際はダークマターが満ちていると考えられているのが面白いポイントです。

上の画像はハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたNGC2525という渦巻き銀河です。

渦に沿って黒いモヤのようなものが存在していますが、これがダストです。

ダストはサイズがおおよそ1マイクロメートルほどのとても小さい固体微粒子なのですが、星形成や惑星形成、高分子形成に一役買っている重要な物質です。

どんな形をしている?

NGC1621
credit : ESA/Hubble & NASA, P. Cote

渦を巻いたものや、楕円状にボヤッと光るものなど、銀河の形態は複数あります。

・渦を巻いた銀河は渦巻き銀河

・楕円状の銀河は楕円銀河

と呼ばれます。

上の画像は楕円銀河です。この画像もハッブル宇宙望遠鏡で可視光線で撮像されたものですが、先ほどの渦巻き銀河と違って楕円銀河は全体的にボヤッとしているのが特徴的です。

 

ほかにも渦巻き銀河と楕円銀河の中間のレンズ状銀河や、どれにも属さない不規則銀河や矮小銀河などに分類されています。

これらがどのように出来上がったかはまだまだ議論の余地があるところですが、銀河同士の合体が鍵を握っていると考えられています。

銀河ってどうやってできた?

最も気になるのが「銀河ってどうやってできた?」

ですが......

結論:まだわかっていない

結論はまだわかっていない!です。

厳密に言うと十分にわかっていない状態で、いくつか候補は挙がっています。

以下で現在考えられている形成と進化のシナリオを紹介しましょう。

銀河形成・進化のシナリオの1つ

1,ダークマター同士が重力で集まる(ダークマターハローの形成)(銀河の母体)

2,ダークマターの重力に引きずられるようにしてガスなどの物質が集まる

3,ダークマターハロー内でガスを主成分として恒星が形成

4,ほかのダークマターハローと合体

5,さらに星形成(合体の際にガスという燃料にされるため)

6,合体したダークマターハロー同士の質量に応じて銀河形態が変化(同程度の質量なら楕円銀河、質量差が大きいなら渦巻き銀河)

7,大質量星が寿命を迎え超新星爆発を起こし、金属などを放出(ダストの形成)

 

もちろんこれだけではないのですが、ざっと説明するとこんなところです。

 

ボトムアップシナリオ(左)とトップダウンシナリオ(右)のイメージ
現在はボトムアップシナリオが支持されている

肝となるのは、ダークマター同士が重力で集まることで形成されたダークマターハローがさらに重力で集まるところです。

これはすなわち、小さいスケールの天体から大きいスケールの天体に成長することを意味しています。

過去には反対に、大きいスケールの天体から小さいスケールの天体が分裂するというシナリオも提唱されていましたが、現在では否定的な描像です。

 

さいごに

今回は天の川とは何なのか?という問いから始めて、地球から銀河までの階層構造や、銀河と銀河形成・進化について説明しました。

なんとも大きな大きなスケールだったことが体感できたと思います。

私たちの住む地球がどのようにして出来たのかもまだ十分わかっていませんし、太陽系がどのように出来たのかも十分わかっていませんし、銀河も宇宙もどうやってできたのか十分わかっていません。

天文学は古くから存在する学問の1つですが、まだまだ取り組むべき課題は山積みです。

私たちの住む地球、ひいては銀河や宇宙がどうやってできたのか、また今後どうなっていくのかという問いに答えるのは大きな課題です。

みなさんも一緒にこの課題について考えてみませんか?

 

おすすめ本:銀河について興味を持ってくれた方へ

最後に銀河に関するおすすめ本を何冊か紹介します。

 

初学者向け

・すべての人の天文学:縣秀彦ほか

opac.lib.niigata-u.ac.jp

銀河に限らず天文学の話題を網羅しています。

単に初心者にわかりやすく書いたというわけではないのがこの本の肝!

所々数式が出てきますが、わからない人は飛ばして読んでも理解することが出来ます。数学が出来る人なら式を見ることでより一層理解につなげることが出来る。そんな本です。

・基礎からわかる天文学:半田利弘

opac.lib.niigata-u.ac.jp

『すべての人の天文学』同様に、銀河以外にも天文学全般の話が網羅されています。

こちらの方がより易しい印象があります。

 

中級者向け(中学校レベルの数学が使える方 or もう少し踏み込んだ内容を知りたい方)

・活きている銀河たち:富田晃彦

opac.lib.niigata-u.ac.jp

読み物の中でも丁度良い難易度でした。

著者の手描きのイラストが載せられており、板書を見ている感覚です。

ほかの読み物や、専門書では中々見られない表現のおかげで理解が進みます。

・銀河物理学入門:祖父江義明

opac.lib.niigata-u.ac.jp

ブルーバックスから、『銀河物理学入門』。

ブルーバックスなので比較的平易に書かれていながらも、踏み込んだ内容が書かれていて読み応えがあります。

ところどころ数式が出ますが、中学生レベルの数学が出来ればおおよそ問題ないでしょう。

・銀河の誕生:藪下信

opac.lib.niigata-u.ac.jp

こちらは銀河に関する読み物です。

数式はほとんど出てきません。

銀河の物理的な性質というよりも、これまでどのようにして銀河の誕生が明らかになってきたのかという、歴史的な展開を知ることが出来ます。

銀河の専門的な勉強をしている学生にもお勧めです。

 

上級者向け(専門書、高校物理を理解している(微積分を使った物理ができれば尚良し)方)

・銀河進化論:塩谷泰広、谷口義明

opac.lib.niigata-u.ac.jp

完全に専門書ですが、和書の中では一番銀河について詳しく書かれていると思います。観測はもちろん、理論的な内容も満載で、いつもお世話になっています。

絶版なのが非常に惜しいです。

・銀河:スティーヴン・フィリップス著、竹内努訳

opac.lib.niigata-u.ac.jp

専門書の中では比較的難易度が低い印象があります。

理論的な内容よりも観測的な内容に力を入れている印象もあります。

文字のレイアウトの影響もあってかより読みやすくなっています。

*1:というのも実際にこのような画像を撮るには太陽系の外から撮影する必要がある。

*2:惑星を名乗るためにはいくつか条件があるので注意。

*3:やはりこのような遠方まで人工衛星を飛ばすことが出来ないのでシミュレーションによるイメージとなってしまう。

*4:重力としか相互作用しないとされる。電磁波とは相互作用しないので見ることが出来ない。

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