みなさんこんにちは!
自然科学研究科 M2 の S.K です.
この記事に興味を持ってくださりありがとうございます!
前回の記事では「四色定理」を通して,あまり知られていない数学の世界の一部を紹介しました.
今回の記事でも”数学” = ”計算,数式”というイメージにとらわれすぎない,”わかる”を大切にする数学をお見せできればと思います.
それでは早速次の問題を考えてみましょう.
問題
出場するチームが 16 チームのトーナメント戦があります.
(野球でもサッカーでも,みなさんが好きなスポーツを思い浮かべてください.)
このとき試合数は全部でいくつでしょうか?
3位決定戦は行われないものとします.
みなさん答えは出ましたか?
正解は 15 試合です.
みなさんはどのような方法で考えたでしょうか.
丁寧に1試合づつ数え上げたという方もいるでしょうし,何かしらの計算をして答えを求めたという方もいるでしょう.
しかしこの問題は出場するチームの数さえ分かれば,一瞬で解決できます.
これを聞いて「何か特別な公式があるのだ」と思った方もいるでしょう.
半分は正解ですが,”数学” = ”計算,数式”というイメージから抜け切れていないかもしれません.
この問題を考えるポイントは,試合数は何を表しているのかという点です.
試合を行うごとに決まるものは何でしょう?
そう,「勝敗」です.
試合は優勝チームが決まるまで行われ続けます.
優勝するチームはもちろん 1 つだけです.
つまり,試合数とは優勝できなかったチームの数を表しています.
このように,何かと何かを1対1に対応させるという考え方は数学において非常に重要です.
上の問題だと,出場チームが 16 チームで優勝するのは 1 チームだけなので,優勝できないチームは 15 チームです.
よって試合数は 15 試合となります.
出場チーム数が奇数のときはどうでしょうか?
出場チーム数が偶数のときに比べて試合数が少なくなるように感じてしまうかもしれません.
しかし,大切なのは「試合数と優勝できずに敗退したチームの数が 1 対 1 に対応する」ということです.この考え方は出場チーム数の偶奇に関係なく使うことができるので,出場チーム数が奇数のときでもチーム数が偶数のときと同じように試合数を求めることができます.
単純に「試合数 = 出場チーム数 - 1」という公式を覚えれば良いだけなのかもしれませんが,ただ公式を与えられて計算するだけではつまらないと思います.
わかるを大切にすると,数学がもっと楽しめる思います.
実際に,この「出場チーム数がわかれば試合数が一瞬でわかる」という話を誰かにしたくなっていませんか?
計算や数式ばかりが数学ではありません.
しかしながら,もちろん計算することも数学の一部です.
少しだけ計算に関する問題も考えてみましょう.
問題
ビスケットを半分もらいました.
その後,前にもらった大きさの半分の大きさのビスケットを “無限に” もらい続けると,もらったビスケットの大きさの合計はビスケット何枚分に相当するでしょう?
つまりはビスケットを 1/2 枚もらい,その後 1/4 枚もらう,1/8枚 もらう,1/16 枚もらう,1/32 枚もらう…と ”無限に” もらい続けると,もらったビスケットの合計は,ビスケット何枚分に相当するでしょうか?という問題です.
さて,
1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + 1/32 + 1/64 + 1/128 + ・・・
と無限に足し合わせていくと,答えはいくつになるでしょうか?
まず,答えが 1 より大きくなることはないということは次のようにして理解できます.
1/2 枚もらい,その後 1/4 枚もらう,1/8枚 もらう,1/16 枚もらう,1/32 枚もらう…ということを繰り返していくわけですから,もともと 1 枚だったビスケットを割って半分だけもらう,残っているビスケットを割って半分だけもらう,さらに残っているビスケットを割って半分だけもらう,ということを繰り返していると解釈できます.
つまり,前の大きさの半分の大きさのビスケットを無限にもらい続けても,ビスケットの総量は 1 枚の中におさまるということです.
無限にもらい続けても 1 枚分を越えることはない,ということは分かりました.
しかしこれがぴったり 1 枚分になるのかが気になります.
この事実を理解するためには,残っているほうのビスケットに着目することが重要です.
まず,ビスケットを 1/2 枚もらうと,残っているビスケットは 1/2 枚です.
次に,ビスケットを 1/4 枚もらうと,残っているビスケットは 1/4 枚です.
さらに続けて,1/8 枚もらうと残りは 1/8 枚,1/16 枚もらうと残りは 1/16 枚,1/32 枚もらうと残りは 1/32 枚…といった具合に,ビスケットをもらうたびに,残っているビスケットは半分,さらに半分と小さくなっていきます.
ビスケットは ”無限に” もらい続けるので,残っているビスケットは ”無限に” 小さくなり続けるということになります.
ここで,もらったビスケットの大きさの合計が 1 枚分よりも少ないとしましょう.(「背理法」という言葉をどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?)
もらったビスケットの大きさの合計が 1 枚分よりも少ないということは,目に見えないくらいに小さかったとしても,残っているビスケットがあるということです.
残っているビスケットがあるということは,割って半分だけもらうことができることになります.
これは,残っているビスケットは ”無限に” 小さくなり続けるという事実に矛盾してしまいます.
この矛盾は,もらったビスケットの大きさの合計が 1 枚分よりも少ないという仮定をしたために起こったものなので,もらったビスケットの大きさの合計が 1 枚分よりも少ないという仮定は間違いであったということになります.
以上のことから,もらったビスケットの大きさの合計は, 1 枚分より多くなることも少なくなることもない,ということが分かります.
つまり,もらったビスケットの大きさの合計はぴったり 1 枚,ということになります.
以上 2 つの問題を紹介しました.
納得するには時間がかかる内容も含まれていたかもしれません.
ぜひゆっくりと考えてみてください.
最後まで読んでいただきありがとうございました!
【参考文献】
根上生也.数学探偵セイヤ.初版,株式会社フジテレビKIDS,2005年,152p.