みなさんこんにちは!
自然科学研究科 M2 の S.K です.
この記事に興味を持ってくださりありがとうございます!
前回の記事では,トーナメント戦の試合数に関する問題や,前にもらった大きさの半分の大きさのビスケットを,無限にもらい続けたときのビスケットの総量に関する問題を考えました.
今回の記事でも,”わかる”を大切にする数学をお見せできればと思います.
それでは早速次の問題を考えてみましょう.
問題
3cm × 3cm の正方形の中に,1.5cm 以上離してピンを刺していきます.このとき正方形の上には最大で何本までピンを刺すことができるでしょうか?
答えは出たでしょうか?
直観的なものでも構いません.
9 本までなら刺せるだろう,と思った方が多いのではないでしょうか?
実際に以下のような配置で,9 本のピンを刺すことができます.
以上のことから 9 本以上のピンが刺せるということはわかりました.
ここで問題になるのは,どんなに配置を工夫してピンを刺しても 10 本以上のピンを刺すことはできないのか?ということです.
それではまず,3cm × 3cm の正方形を縦横それぞれ 1cm の 9 個の正方形に仕切ってみましょう.
ここに 10 本のピンを刺していこうとすると,1cm × 1cm のマスは 9 個しかないので,どこかのマスに 2 本のピンが入ることになります.
しかし,1cm × 1cm の正方形の中で,最も距離が長いのは対角線の端点です.
このとき対角線の長さは,√2cm です.
つまりは約 1.4cmになります.(三平方の定理を思い出してください.)
よって 1cm × 1cm の正方形の中に,1.5cm 以上離して 2 本のピンを刺すことは不可能です.これは,もとの 3cm × 3cm の正方形の中に 10 本以上のピンを刺すことができないということを意味しています.
つまり,刺せるピンの本数は最大で 9 本 までだということがわかります.
もう一問考えてみましょう.
問題
5 × 5 のマス目があります.このとき,一つのマスからスタートして,すべてのマスをちょうど一回ずつ通ってスタートしたマスに戻ってくることは可能でしょうか?
移動は縦か横のみで,斜めの移動は禁止です.
どのマスからスタートしても構いません.
いかがでしょうか?
なんとなく不可能っぽいな,と感じた人が多いのではないかと思います.
正解を先に言ってしまうと,すべてのマスを通ってスタートしたマスに戻ってくることは不可能です.
もしこれが可能だったとしたら,すべてのマスを通ってスタートしたマスに戻ってくるルートを一つ例示すればみんな納得できるわけですが,不可能となると,みんなが納得できる説明をするのは難しくなりますよね.
ここで注目したいポイントは 2 つあります.
1. 黒マスは 13 個,白マスは 12 個ある
2. 必ず黒マスと白マスを交互に通過することになる
黒白 黒白 黒白 … と黒マスと白マスを交互に通過するので,すべてのマスをちょうど一回ずつ通るためには黒マスと白マスの数が一致していなければなりません.
今,黒マスと白マスの数が異なっているので,すべてのマスをちょうど一回ずつ通ってスタートしたマスに戻ってくることは不可能ということがわかります.
納得するには時間がかかる内容も含まれていたかもしれません.
ぜひゆっくりと考えてみてください.
最後まで読んでいただきありがとうございました!
【参考文献】
根上生也.数学探偵セイヤ.初版,株式会社フジテレビKIDS,2005年,152p.