数学ができると何が嬉しいのか

こんにちは。

新潟大学自然科学研究科M2のR.I.です。

 

"数学ができてなんの役に立つの?"

"数学がなくても生きていける"

 

数学を扱う分野にいるとよく言われることです。

2つ目の「~なくても生きていける」、に関してはごもっともではあるなぁと思います*1

 

ですが、ここでは改めて数学ができると何が嬉しいのかということについて私の考えをつらつら書いてみようと思います。

 

 

 

 

この記事を読む前に......

まず注意書きなのですが、これは執筆者個人の感想ですので、本記事の内容が絶対であるというわけではないということをここで断っておきます。

 

 

1.数学はある意味1つの言語であるという見方

数学もある意味1つの言語として見ることが出来そう

みなさんは数字や数式に対してどのようなイメージを持っていますか?

 

ここでは数字や数式が何を表してくれるのかということを考えてみてください。

 

いかがでしょうか。

私は”定量性を表すための言語”だと思っています。

 

我々が普段使っている言語は日本語ですが、日本語は主に日本で使える意思疎通のための言語であると考えることが出来ます。

ほかにも言語と言えばプログラミング言語があります。これはコンピュータに指示や命令を与えて計算や実行させるための言語であると言えます。

 

さてここで”定量性”という言葉が出てきました。

おそらく意味がよくわからないという方が多いと思うので、次のセクションで説明しようと思います。

定量性とは

数字で説明できる

定量性ないし定量的というのは数字や数式で表現することやその性質を意味します。

逆に数字を使わずに表現できる性質は定性的と言ったりします。 

 

例えばなにか複数のものや現象を比較するときに、数字を使うことで違いが明確になったり、どれだけ数値を変えればどれだけ違った結果になるか、といったことが議論しやすくなります。

 

これらをより一般的に(広く、抽象的に)議論をするために数式が使われます。

数字だと特定の値が持ち出されますが、数式の場合は、任意の整数、自然数、実数とより広い範囲まで扱うことが出来るようになります。

2.直感とは異なる現象を説明できる

数学ができると嬉しいことの1つは定量的な表現が出来るということでした。

さてもう1つ、先ほど登場した「数式」を用いると嬉しいことがあります。

それは、直感に反するような現象を説明できることがあるということです。

具体例を2つ用意してみました。

具体例1. 最速降下問題

ある点からある点までボールを転がすとき、最速で転がるのはどんな曲線だろう?

個人的に印象的な例が「最速降下問題」とよばれる問題です。

 

最速降下問題とはざっくり言うと、

ある点から有る点までボールを転がすとき、最速で転がるのはどんな曲線だろう?

という問題です。

どんな形でも同じだろう...と思った方はいったん考え直してみてください*2

 

これはすでに答えが出ていて、サイクロイド曲線であることが知られています。詳細は別文献にゆずるとします。(例えば以下のサイト)

直感的には円弧とか直線とかが最速と思った方が多いかもしれません。しかし数式を使って評価するとサイクロイドであるという結果が出てきました。

もちろんこの数式を用いて理論的に導出した結果は、実験によって確認することが出来ます。YouTubeで実験映像を見ることも出来ます。

具体例2. 野球の変化球

回転のかかったボールはどちらに曲がるのか?



 

日本で最もポピュラーなスポーツの1つと言えば野球ですね。ピッチャーから放たれるボールは直線軌道以外にも曲がった軌道を描くことがあります。変化球というやつですね。

 

さて、ではみなさん。上の画像のボールはこのあとどちらの方向に曲がっていくと思いますか?

 

・・・

 

答えは下向きです。

いかがでしょう。直感に反する結果だった方もいると思います。

定性的な説明としては「ベルヌーイの定理によって圧力差が生じるため高気圧側から低気圧側に追いやられてしまうから」ということになります。

より詳しく知りたい方は「マグナス効果」で調べてみてください。

数学が出来ると嬉しいこと、ほかにも......

もちろんほかにも数学が出来ると嬉しいことはあります。

よく説明される数学が出来ると嬉しいこと

  • 論理的思考力が上がる
  • 計算力が上がる

なんていうのはよく言われますね。

論理的思考力が上がることに関しては、、実際どうなんでしょうか。一応調べてみるとなにやら相関はあるみたいなので*3、数学を学ぶことで論理的思考力は向上するのかもしれません*4

 

計算力についてもいかがなのでしょう。私は単純計算が苦手な方ですし、数学科の友達も例えば割り勘ができなかったりしますので、必ずしもそうとは言えないでしょう*5

私の思う数学が出来ると嬉しいこと

先の論理的思考力に関しては、実生活にどれだけ恩恵があるのかは正直わかりません。

計算力が上がるに関しても実際どうなんだろう......という印象です。

私自身、お会計の割り勘やおつりの計算程度だったらできますが、結局計算ミスが多いもんです。

研究室では、ゼミなど見ていても具体的な数値を使って計算するとミスが起こったりする光景は珍しくありません(先生でも間違うことがしばしば)。

 

数学ができるとうれしいこと. 数字に強くなれる

じゃあ私の思う数学が出来ると嬉しいことは何かというと、1つ目は「数字に強くなれる」ということです。もうちょっと深掘りしますと、数字や数式が出てきても物怖じしにくくなるという感じですね。

 

例えば金融商品を購入する際は、その利回りや生活資金からどれだけを投資するべきかなどを見積もる必要があります。このとき、もちろん数字を扱うことになりますが、数学に達者な方はそこまで物怖じすることはないでしょう

数学ができるとうれしいこと. データやグラフの読み取り能力が上がる

もう1つはデータやグラフの読み取り能力が上がるということです。

お店やネットを見るだけでも案外いろんなところでグラフを見かけるものです。

ただそういうのはおおよそキャッチーなグラフだったりするもので、よく見てみるとグラフとして不適当なものも混ざっていたりします。

そのためグラフを正しく読み取るという能力は必要になるわけです。

 

逆に自分がグラフを作る側になったときも役に立ちます。グラフをつくる側だと、データを読み取って最適な方法でグラフ化したり、適切な指標を導入する必要があります。

ヒストグラムにするのか、折れ線グラフにするのか。

ビンはどの程度にするのか、軸は対数にするのか。

単に平均値で評価して良いのか、分散値も使うべきか。

などなどパッと思いつくだけでもこのくらい出てきました。

 

まとめ

  • 数学はある意味言語の一つ
  • 数学は定量性を表現できる
  • 直感に反する現象も説明できることもある
  • 数学が出来ると定量性の表現・読み取りができて嬉しい

長々とお付き合いありがとうございした。

数学が出来ることの嬉しさが少しでも伝わったら嬉しい限りです。

数学が出来ると嬉しいことというのはほかにもたくさんあることと思います。皆さん自身でもこんなことが嬉しい!と発見できたら是非教えてください。

 

*1:それでも数学が出来る人がいるおかげで、数学が出来なくてもうまく生きていける側面があるというのが私の本心です。例えば私たちの生活には電気が欠かせませんが、電気を生み出すには電磁気学(物理学)の知識が必須です。電気をコントロールするのにも同様の知識が必要です。

*2:最初緩やか最後急、最初急で最後緩やかという極端な例を2つ考えると良いでしょう。ゆっくり転がっている間にもう片方は滑り終えそうですよね

*3:橋本三嗣 "数学教育における論理的思考力に関する調査研究" 日本教科教育学会誌 2001.6 第24巻 第1号

*4:私は全くの素人ですが、読んでみるとこの評価で良いのだろうかとか不備があるのではないのか、とか色々気になるポイントはあると感じました。

*5:計算力に関する言及は例えばTV番組「チコちゃんに叱られる」2020年9月18日放送。

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