学会や研究発表などのアブストラクトの書き方

こんにちは。
図書館学習サポーター・自然科学研究科D3のS.Tです。

研究室に配属されると、学会や研究会に参加する機会が増えてきます。その際、多くの学会では「アブストラクト(研究概要)」の提出が必要になります。しかし初めて書く場合、背景のまとめ方や段落構成など、何から手をつければよいかわからず悩むことも多いと思います。

そこで本記事では、理系分野のアブストラクト作成で共通して重要となるポイントを、初めて書く学生にもわかりやすく整理して解説します。なお、ここで紹介する基本的な構成や考え方は、文系分野のアブストラクト作成にも応用できる部分が多いため、ぜひ参考にしてください。

 

アブストラクトの役割

学会では開催期間中に、数百から数千もの演題で講演が行われます。すべての講演を聞くことは不可能なので多くの人は、タイトルやアブストラクトを参考にして聴講する発表を選択し参加します。つまり、アブストラクトは発表の広告でもあり、興味深い内容が載っていれば、見に来る人が増えるかもしれません。聴衆の中には分野が少し離れているものの、新しい研究対象を探したり、自身の研究への応用の可能性を見出して聞きに来る人もいるかもしれません。そのため、アブストラクトで先行研究を含めた大まかな内容が分かるようにする必要があります。

また、アブストラクトは一般にA4用紙一枚程度と指定されている場合が多いです。あまり詳しく書くことはできませんので、書く内容を絞ることが必要となります。

 

アブストラクトの作成方法の最初のステップ

1. テンプレート・規定を確認する

アブストラクトを作成していく第一歩として、様式やテンプレートを確認しましょう。多くの場合、A4用紙一枚での作成であり、フォントの大きさや文字数、使用できる画像などが規定されています。テンプレートが用意してあれば、それをもとに作成することにより、正しいレイアウトで作成することができます。

 

2. 過去のアブストラクトを参考にする

過去に開催された学会の概要集のアブストラクトを確認します。自分の研究分野に近い研究のアブストラクトを参考にすると、一から構成を考えるよりも、手早く、理解しやすいアブストラクト作成への助けになります。また、自分の所属する研究室の先生や先輩方から、過去に作成したアブストラクトを確認させていただくと、より自分の分野に近く、とても参考になります。

 

本文の構成

アブストラクト本文は学会の規定により異なりますが、ここでは一例としてA4用紙の1/3がタイトル、氏名、所属が記載され、残りの2/3程度が本文となる場合を仮定し、2段落構成で作成する場合で解説します。実際にアブストラクトを書く場合には、テンプレートの指示に従って適宜段落を増やすなどしてください。

 

第一段落:研究分野の概要、先行研究、研究目的

第一段落では、本研究はどのようなものであり、どのような位置づけであるかを記述します。まず冒頭では本研究分野がどのようなものなのか簡単な導入文を書き、「研究分野の概要」を説明します。次に、自分の研究内容に関して、何が分かっていて、どのようなことが予想され、どのようなことが課題となっているかなど、主要な「先行研究」をまとめます。そして、一段落目の最後には、これまでに述べてきた先行研究に対して、課題や疑問点を提示し、なぜこの研究が必要か「研究目的」を一文で端的に示します。

 

第二段落:研究方法、研究結果、考察、まとめ

第二段落の冒頭では、本研究では何を明らかにするために、どのような方法で研究を行ったのか、用いた手法や測定・解析方法など「研究手法」を簡潔に記述します。次に、研究で得られた主要な発見やデータなど「実験結果」を要点に絞って記述します。そして、実験結果から述べられること、主張したいことを「考察」として述べ、最後に本研究に基づき、研究の意義や今後の展望を簡潔にまとめ、「結論」を述べ文を締めます。

 

よくあるつまずきポイント

よくあるつまずきやすいポイントとして、以下の点が挙げられます。

  • 背景が長くなりすぎて結果を書くスペースがなくなる
  • 結果が抽象的で「何が新しいのか」が伝わらない
  • 実験結果や考察の記述が詳細すぎて本質がぼやける

アブストラクトは「研究の全体像をA4 1 ページで伝える文章」です。詳細は論文や本発表で説明すればよいので、まずは要点を明確にすることが大切です。

 

作成後のチェックと提出までの流れ

アブストラクトが書けたら、必ず指導教員や先輩に確認してもらいましょう
修正指摘を踏まえて文章を整えた後、共同研究者全員に共有し、意見を反映して最終版を作成します。

特に共同研究者が多い場合、修正のやりとりに時間がかかるため、

提出2~3週間前:原稿作成開始

提出1週間前:原稿完成 → 共同研究者へ送付
を目安にすると余裕をもって提出できます。

 

おわりに

アブストラクトは短い文章ですが、研究の成果を整理する良い機会でもあります。書き慣れると、学会発表や論文作成にも役立つスキルとなるので、ぜひ早めに取り組んでみてください。

アブストラクト作成で困ったことがあれば、図書館学習サポーターにもお気軽にご相談ください。

 

アブストラクト提出前チェックリスト

アブストラクト作成におけるチェックリストを作成しましたので、ぜひご活用ください。

1. 基本情報

  • 提出期限、テンプレートの有無を確認したか
  • タイトルは研究内容を端的に表しているか  
  • 著者名・所属は正しく記載されているか  
  • フォーマット(字数制限、フォント、段落構成、図表の表記)は規定に従っているか

2. 第一段落(背景・目的)

  • 研究分野の概要を簡潔に説明しているか
  • 主要な先行研究や課題が整理されているか  
  • 本研究の目的が明確に示されているか

3. 第二段落(方法・結果・考察)

  • 使用した研究手法や解析方法を簡潔に記述しているか
  • 主要な結果を定量的・客観的に示しているか
  • 結果から導かれる考察を簡潔にまとめているか
  • 結論や今後の展望を端的に示しているか

4. 表現・スタイル

  • 専門用語は必要に応じて説明し、分野外の読者にも理解できるか
  • 冗長な表現を避け、簡潔で論理的な流れになっているか
  • タイトルと本文の内容が一貫しているか
  • 誤字脱字や不自然な日本語がないか
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