人文社会科学系の調査における新聞記事の活用

皆さんこんにちは。現代社会文化研究科のY.Kと申します。

皆さんはレポートのためのデータを、どのような方法で集めることを真っ先に思いつきますでしょうか。

人文社会科学系の学生であれば、聞き取りやアンケートの調査、統計や資料の収集といったものが挙げられると思います。

そうしたデータ収集に、「新聞記事の利用」を選択肢に加えてみませんか?

 

資料としての新聞記事の特徴・メリット

データの収集方法は、聞き取り調査やアンケートといったものをイメージする方が多いと思います。

しかし、そうした直接データを収集する方法と並んで、文献などの資料からデータを得ることも、調査においては非常に重要です。

使われる資料は、広報誌、パンフレット、チラシ、手紙、日記、雑誌、行政の公的記録...など多岐にわたります。

こうした資料を分類した場合、以下のように整理できます(山本 2010より)。

①私的記録(日記、手紙など)

②マスメディアの報道(新聞、雑誌、映画、ラジオ・テレビ)

③公的記録(戸籍・住民票、国勢調査などの官庁統計、行政文書など)

この分類において、新聞は ②マスメディアの報道 に分類することができます。

①は主観性、③は客観性が強い資料ですが、②はその中間に位置する資料であるといえるでしょう。

そのため、新聞については、客観性はある程度あるものの、発行する新聞社や執筆する記者によるバイアスが含まれていることを考慮する必要があります。

 

以上の特徴がある新聞記事ですが、日々における最新の情報を伝えるという特徴から、過去に発行されたものであれば各分野の歴史的な流れや、当時の状況や背景を調査する上で重要な資料であるといえます(毛利 2021)。

加えて、現在では、新聞記事のデータベースを検索することによって、訪れる地域や調べたい事象について事前調査が可能です。全国紙のデータベースでも地方欄を閲覧できるものがあるため、事前調査に有効です。

こうした、発行されていた時期の世相も反映されているものとして捉えられる新聞記事を、資料の特性を理解して活用していきましょう。

 

全国紙と地方紙の違い

一言で新聞といっても、様々な種類があります。一般的なもののほかに、特定の業種に向けたものも数多く発行されています。

その中でも広い分野を扱う一般紙は、発行される範囲によって全国紙ブロック紙地方紙と分類されます。

全国紙の特徴

毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、産経新聞といった全国紙は、文字通り日本全国に販売することを前提としたもので、全国的に重要な報道が中心となります。

そのため、日本全体における、当時の政治、社会、経済、文化等の状況を把握することが可能です。

地方紙、ブロック紙の特徴

地方紙は各都道府県を対象としたもので、全国的な記事も取り上げますが、その地域において重要なニュースが掲載されています。ブロック記事は、西日本新聞などの、都道府県より広域な範囲を対象とした新聞です。

こうした地方紙、ブロック紙は、その地域における図書館において、何らかの手段で閲覧できるようにされています。なので、調査したい地域が決まっている場合は、その地域に立地している図書館のHPなどをチェックし、閲覧方法を確認しておきましょう。

 

新聞記事を調べる、収集する方法

データベースでの検索

新聞社の多くは、自社の新聞記事を検索するデータベースを整備しています。

キーワード検索で、気になる言葉や用語を使っている記事を探したり、時期を限定して探したりすることが可能です。

ただし、データベースに収録されている年代が限定されている、あるいは見出しのみしか検索できない場合があります。そうした場合は、縮刷版やマイクロフィルムなど、別の手段で記事を探す必要があります。

見出しだけでも検索できれば、その記事が書かれた日の新聞の原紙、あるいは収録されている縮刷版やマイクロフィルムまでたどり着くことができます。

原紙から探す


原紙(中央図書館A棟1F、職員の許可を得て撮影)

 

原紙とは、通常の新聞紙を指します。

図書館では、毎日刊行される新聞を収蔵し、閲覧できるようにしていることが多いです。古いものは職員の方にお願いして閲覧しましょう(※中央図書館では過去1年分を保管しています)。

もちろん、データベースのように検索をすることができないため、特定の記事を探すのは難しいです。

ですが、刊行されたときのページや、紙面での大きさ、同時に掲載されていた広告といった、実際の新聞紙でしか確認できない内容を調査することが可能です。

縮刷版から探す


縮刷版(中央図書館A棟1F、職員の許可を得て撮影)

 

月ごと新聞を縮小し、まとめて冊子にしたものです。そのため、原紙と同様に、実際の新聞紙でしか確認できない内容を調査することが可能です。

こちらも図書館で収蔵されています。

月ごとで冊子にしますので、直近のものは縮刷版で閲覧することは難しいです。そうした場合は、原紙を用いて調査しましょう。

また、全国版の縮刷版は、各地域版の記事が収録されていないこともデメリットの一つです。

マイクロフィルムから探す


マイクロフィルム

 

縮刷版と同様に、月ごとの記事をまとめたものですが、映画のフィルムのようなかたちをしており、専用の機器で閲覧します。

最初は機器の操作に戸惑うこともありますが、機器によってはボタン一つで記事全体、あるいは一部を拡大したものをプリントすることができます。原紙や縮刷版にはないメリットの一つです。


マイクロフィルム閲覧機器

 

また図書館によっては、データベースや原紙、縮刷版よりも幅広い年代を網羅していることがあるので、使う価値は大いにあります。ためらわず職員の方に相談してみましょう。

もちろん、データベースのように特定の記事を検索することはできないため、ある程度調べたい時期に当たりをつけて利用することをオススメします。

 

新潟大学で利用できる新聞記事検索

新潟大学附属図書館のホームページから、学内で利用できる新聞記事検索のサービスを確認することができます。


www.lib.niigata-u.ac.jp

 

 

検索ツールの「+」をクリックして、カテゴリから絞り込めるようにしてください。

検索ツールでの絞り込み
朝日新聞クロスサーチ

朝日新聞クロスサーチ

※学内限定、同時アクセス数1名

毎索(毎日新聞)

毎索

※学内限定、同時アクセス数1名

新潟日報記事検索データベース

https://dbs.g-search.or.jp/cgi-bin/GSHASP/USER/LPacc_login.cgi?brdid=NIGT

※学内限定、同時アクセス数各地区1名

にいがた MALUI連携・地域データベース

新潟大学で利用できるデータベースの中には、新潟大学が収集した映像・音声資料や、新潟県立図書館が所蔵するマイクロフィルムをウェブ上から検索できるサービスがあります。

arc.human.niigata-u.ac.jp

 

このサービスでは、新潟県の地方紙の中でも、新潟新聞(1877~1938年)、新潟毎日新聞(1917~1941年)、新潟時事新聞(1924~1933年)、新潟日日新聞(1941~1942年)といった、今では入手困難な新聞資料を閲覧することが可能です。

明治~戦前の新聞がアーカイブ化されているので、是非利用してみてください。

 

他の地域の図書館での新聞検索

自分が住んでいる場所以外の地域について調査をするとき、その地域の状況について、過去も含めて把握する上で新聞記事を用いることは有効です。

全国紙の地域版や、地方紙、ブロック紙といったものは、それぞれの地域に立地している図書館での閲覧が可能なことが多いです。

閲覧できる方法は、各館の整備状況によってまちまちですが、職員の方々の手をお借りしながら利用してみましょう。

 

まとめ

ここまで、人文系の調査において有効となる新聞記事の利用方法を紹介しました。

インターネットのみの調べものでは限界がある場合、新聞記事を調べると思いのほか楽に解決するかもしれません。

また、新潟大学附属図書館では新聞検索に関するイベントがありました。そちらの資料も是非ご覧ください。

 

参考文献

池田祥子 1995. 『文科系学生のための文献調査ガイド』 青弓社.

opac.lib.niigata-u.ac.jp

山本 努 2010. 「文書」の収集―データの源泉①. 谷富夫・芦田徹郎編  『よくわかる質的社会調査 プロセス編』 ミネルヴァ書房. 38-39.

opac.lib.niigata-u.ac.jp

毛利和弘 2021. 『文献調査法―調査・レポート・論文作成必携―(情報リテラシー読本) 第9版』 株式会社DBジャパン.

opac.lib.niigata-u.ac.jp

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